会話の輪モデル

研究者:<217日研究会メンバー>

 

概要

「会話に参加しなきゃ」と思っている時に感じる、場の圧力を記述するためのモデル。

「会話の輪」に入るためには条件があり、その条件をクリアしていれば会話の仲間として認められるが、その条件をクリアしていない場合会話の参加者として認められない、と考える。

人それぞれ、「会話の輪」に参加している条件は異なっており、どの段階を採用しているかによって人の特徴を記述する。

 

「会話の輪」の「内側」と「外側」

・大まかに、日常の会話の場においては、「会話の輪」の「内側」と「外側」という二つの位置取りがある。

・「内側」で居る時は、周囲の人間と会話で繋がっていることを感じることができる。この場合は、他の会話の参加者に対して配慮しなければならない。

・「外側」で居る時は、周囲の人間に自分の存在が認められていない代わりに、周囲の人間に対して気兼ねする必要はない。


(おまけ)

・「受け身のコミュニケーション」をする人は、「外側」に居る事=「目の前の会話に自分が参加できていない」状況に慣れており、会話の輪の中に入れていない状況でも、それほど居心地の悪さを感じない人が多いのではないか。 

・「踏み込みすぎるコミュニケーション」をする人は、「外側」に居る事に慣れておらず、「外側」にいると不安を感じる。そのため、何とか「内側」に入らなければと、無理に会話に入ろうとしてしまったり、なんとか話題を続けなければと焦ってしまったりする人が多いのではないか。


「会話の輪」の境界線

・「会話の輪」の内側と外側を分ける境界線は、人によって異なる。

・研究会の参加者の中では、内側と外側を境界線として、以下のものが登場した。

 a.「自分が発言している」

b.「聞いているだけでも構わないが、笑顔で話を聞くなど、会話に楽しそうに参加していることが相手に伝わる」

 c.「聞いているだけだが、うなずくなどの何らかの反応を返している」 

 d.「聞いているだけで、反応を返していない」

・それぞれの人は、自分が信じている「境界線」の条件をクリアしていることで、自分が会話の輪の内側にいると感じることができる。

 

「会話」の最適解

・会話にさほど積極的ではなけれども、一応は周りとつながっていたい人の場合、「会話の輪の内側には含まれるけども、自分にかかる責任はできるだけ強くない位置」が最も居心地の良い最適解となる。

例1:

「会話の輪」の条件が、c.「聞いているだけだが、うなずくなどの何らかの反応を返している」であり、かつ自分から話すのはできるだけ避けたい人の場合、「自分から発言する」のは居心地が悪く、「他の人が話しているのをとりあえずうなずきながら聞いている」状態が理想の状態となる。そのため、飲み会などの場では、色々な会話の輪を飛び回りながら、端っこの方でふんふんとうなずきつつ話を聞く、というのが一番居心地が良い。

例2:

「会話の輪」の条件が、b.「聞いているだけでも構わないが、笑顔で話を聞くなど、会話に楽しそうに参加していることが相手に伝わる」人の場合、「会話の輪」に入るためには、ずっと笑顔で話を聞いていなければならない。また、自分から話をするのが苦手な場合は、とにかく聞き続けているのが理想の解になる。そのため、「ずっと笑顔で話を聞いているのが疲れる」という現象が起こる。

 

・また、「内側」に入る条件が厳しいほど、「外側」の方がより居心地が良くなる傾向がある。

例3:

 飲み会などの場に参加すると、興味の無い話題でも反応を返さなければいけないと思ってつらくなる。そのため、飲み会や交流会が嫌で、そういう場に参加すること自体を避けてしまう。

 

おまけの記述

・「会話の輪」の「内側」に居続けることに抵抗がある人は、「外側」に居場所を求めようとして、その戦略を発達させることがある。

・例えば、「あの人は飲み会には来ない人だよ」というような周囲からのイメージを先に獲得しておくという戦略がある。「周りから外れた変なヒト」という周囲からのイメージを先に獲得しておき、そこに逃げ込むことで、「外側」にいながらでも、「会話の輪」の参加者とのつながりを維持することができ、「外側」の居心地を良くすることができる。